岩手の菓子について (シリーズ その3)
白沢せんべい
いわて医師協同組合 齊藤 裕
岩手県にも、 数々の銘菓と呼ぶに相応しいものがあるが、
「南部鉄器」 と並んでの名物は 「南部煎餅」
である。 その昔、 冷涼な岩手では凶作が絶えず、
保存食として南部煎餅がありほんの2、 30年前まではどこの家の菓子鉢にも煎餅が入っていた。
それが今や、 盛岡を代表する土産品であり、
噛めば噛むほどに滋味が口中に広がり 「止められない!」
の世界にはまる。 煎餅専門店の 「白沢煎餅店」
社長・白沢国雄氏は飽くまで、 手作りに拘っている。
店は、 盛岡市紺屋町、 旧消防第5分団番屋の斜め向かいに位置する。
勿論、 使用する焼き機は、 南部鉄器である。
全国的な知名度は低いかも知れないが、 海外にお土産に持って行っても、
なかなか好評である。
凡そ、 30種の製品があるが、 なんと言っても一番よく売れるのが、
クラシックで伝統的な、 ゴマ煎餅である。 生地は地元の南部小麦を皮も芯も一緒に引いた一本挽きの粉に赤穂の粗塩、
重曹、 水を混ぜ合わせただけの単純にタネを黒ゴマの上に丸く伸ばして、
鉄の型に入れて180度で焼き上げる。 (小麦は生き物で、
粉のご機嫌を見ながら水と重曹の量を加減して社長一人練り上げるとか)
ゴマの他に、 ピーナッツ、 しょうゆ、 トウガラシなどが人気。
バターを使ったクッキータイプもある、 カボチャを生地に織り込んで種子を表面につけた
「かぼちゃ煎餅」 ココアを練り込んだ 「ココア煎餅」
は最近のヒット作。 観光の若い女性達にも噛めば噛むほど味の出る素朴な味わいの南部煎餅は、
その風味が岩手人の人柄にも喩えられることもあるそうな。 |