この度いわて医師協同組合から京都府保健事業協同組合
(京都府保事協) の情報事業視察に機会を与えられたのでその概要について報告する。
平成12年10月30日 (月) 午前10時、 斉藤恵子先生、
齊藤 裕先生、 関 洋一コーディネータ、 鈴木勝征事務長、
小山龍昭課長そして岩動 孝の6人で京都市中京区にある保事協を訪ねた。
宮川 滋事務局長、 大森俊次総務課長・山田 明総務課情報担当の三氏の出迎えを受け、
親切に対応していただいた。 大森総務課長、 山田 明さんより京都府保事協における情報事業に関するこれまでの経過、
現況そして今後の課題などについて詳しい説明を頂いた。
説明の要旨は次のとおり。
昭和26年に設立された京都府保事協は組合員数約1,012名、
そのうち医科は826名、 歯科が186名である。 医師会の内部のものではなく独立した組織で、
このことが協同組合としての機能を果たしやすいという事につながっている。
医師歯科医師協同組合とするべきであるが保健事業協同組合と呼ばれている。
歯科が参加していることから組合員の平均年齢は61歳と若く情報事業を行いやすい環境にある。
平成3年のバブル景気の終わり近くに最高値で現在の土地を現金で買い求め、
その土地に8階建ての建物を建築した。 目に見える資産があるという事は医師会から独立して事業を行う上で非常に好都合である。
情報事業は保事協と組合員とのつながり、 医療と患者とのつながりを持つという意味で極めて重要であると認識しているが、
この事業は多くの事業の一つであり、 最近ようやく
「収支とんとん」 というところまできたが収益をあげるには至っていない。
平成6年に行ったアンケート調査を参考に多くの事業を展開した。
その経験から言えることは、 組合員とその家族の人達は保事協に、
情報の発信源との役割を求めていないという事である。
アンケート調査の結果組合員が求めている情報としては医療制度・経営管理・税務・機器等購買関連などの医療経営情報、
医師・歯科医師の地域分布状況や病院情報などの医療機関情報、
金利動向・健康情報・買物情報などの生活情報、
旅行・観光・グルメ・映画・コンサートなどの趣味コミュニケーションなどであったが、
そういう情報を自前で苦労して作っても誰も見てもらえない。
そういう情報にアクセスできる環境を整え、 保事協のホームページからリンクできるようにしたほうがはるかに効率的であり、
より良い情報を提供できる。
組合員が持っている情報機器としてはファクシミリが86%、
パソコンは40%であったので、 第1段階としてTOW-WAY
(双方向) のファクシミリ・ネットワークの実現を目指した。
このネットワークはパーソナル・コンピューターをベースにしたFAXサーバ機を中心にして、
一般家庭ファクシミリとのやり取りが出来るシステムであった。
平成6年後半からのインターネットの登場がいわゆる情報化推進に拍車をかけた。
情報のやり取りはキーボードを扱える人でなければ出来ないということが大幅に改善され始めた。
インターネット利用は情報の発信者としての利用よりも情報を求めることに重点がおかれている。
このような観点から保事協としては 「どのようにしたら組合員がインターネットを駆使できる環境が出来るか」
を仕事とする事にした。 ホームページ上に用意した膨大なデータベースのほんの少ししか組合員は取りに来ない。
組合が用意すべきものはデータそのものよりインターネットを使える環境そのものであり、
必要な情報を簡単に求めることが出来るようなホームページを作ることこそ組合に求められているものである、
というポリシーで事業を展開する事にした。
まず、 単年度事業として何時でも撤退できるような約束で、
借り物のサーバを利用してプロバイダー事業を行った。
接続費は無料、 独自のドメインネームを利用できる事にした。
幸い接続環境が良く、 保事協ネットは何時でもつながり非常に軽いという評判になり、
「どうすれば保事協のネットに入れるか?」 との問い合わせが多くあり、
それに対して 「保事協の組合員になればよい」
ということで、 組合員の拡大につながった。 電子メールが普及し、
名刺にメールアドレスを印刷する人が増え、 1年で事業を終えるということは、
メールアドレスの変更を強いることになり、 借り物のサーバによるプロバイダー事業は続いているが、
今度は有料とした。 1年間無料で利用した人は2年目から有料、
新規の人は無料ということにしたが、 現在は全て有料となっている。
こうなると、 プロバイダー接続のためのコンピューターソフトを組合員に販売できる。
インターネット・電子メール普及のためには、
コンピューター・プロバイダー契約・コンピューター設定をセットにして販売することを始めたが、
中には途中で使用を止める人もある。 そういう人のためにサポートする人が必要である。
コンピューターに詳しい山田 明君の入社を機にサポートシステムが機能した。
彼はまず電話で何が問題かを尋ね、 問題が分かった上で対処法を電話で話し、
自分で解決してもらうという手法をとった。 それにより実際に組合員のところに出向くという事はほとんどない。
このようにして徐々に利用者が増え、 現在では回線を増やしている。
保事協では組合員のホームページ開設をサポートしている。
2ページまでのホームページ作成を無料で提供している。
その他インターネットを利用した事業としては、
医療従業員の共同募集、 モバイル利用、 年賀状作成講習会、
液体プロジェクターを用いた文化講演会、 インターネット個人指導
(2時間で10,000円)、 婦人部の活動費として年間200万円を用意、
家族会 (家族・従業員を含んだ会合)、 ろくろを用いた土ひねりの会、
など多くの催しを行っている。
このような組合員のための情報化事業を活発に行っているが、
保事協内部ではイントラネットによる情報の共有化は行っていない。 |