特集

産業廃棄物の今後の方向性について

社団法人岩手県産業廃棄物協会  
専務理事 千葉 長一

はじめに
 平成12年6月の廃棄物処理改正以降、 従来の廃棄物処理の方法がだいぶ変化してきた。 そのひとつとして、 従来の廃棄物に対する考え方は、 廃棄物の中からリサイクル物を収集していたが、 循環型社会形成基本法により 「循環資源」 いわゆる有用な廃棄物について、 法制化がなされ、 現時点では、 容器包装リサイクル法、 家電リサイクル法、 建設資材リサイクル法、 食品廃棄物リサイクル法等がある。
 これらのリサイクル法が施行され、 法的には、 産業廃棄物から区分されたシステムが確立したが、 実際には稼働について多くの問題がある。
 拡大生産者責任制度が排出者に浸透することによって、 循環資源と廃棄物の区分が明確化され、 再生資源としての取り扱いが今後一層確立したものとなる。 ただし現行では、 再生利用された場合に 「再生資源」 として認定されることになっている。 いわゆる、 再生利用されるまでは、 「廃棄物」 の解釈である。 このためにも再生材による製品化と市場形成が必要である。
 廃棄物処理法の改正に伴い、 国が廃棄物の出抑制・再生利用による減量・不適正処理防止のための 「基本方針」 を策定することになっている。
 各県においても 「適正処理計画」 を定めることになっている。 このことは、 各県の処理に独自性を認めたもので、 今後の処理業界に多大な影響をもたらすものである。

1) いわて資源循環型廃棄物処理構想
 この構想は平成13年3月27日に岩手県が前述の主旨にもとづいて作成したもので、 21世紀に岩手県における廃棄物処理対応を示唆するものである。 これに基づいて5年ごとに 「岩手県廃棄物処理計画」 が作成、 見直しが図られ、 平成29年度まで続けたいとしている。
 この構想の基本的な考え方は、 次の4項目である。
(1) 原則 「自県 (圏) 内処理」 とする。
(2) 一般廃棄物と産業廃棄物の 「共同処理」 を推進する。
(3) いわてクリーンセンター方式の推進
(4) 廃棄物処理業者の育成と機能分担

 このことからも県内で排出される廃棄物は、 県内廃棄物処理施設で処理されることが明確化されている。 しかしながら特別管理産業廃棄物の処理状況は、 下記のとおりである。 (平成9年度収集運搬報告書より)
廃 棄 物 感染性 汚泥 廃油 廃酸 廃アルカリ その他 合 計
県内処理 1,615t 2 204 94 3 8 1,926
県外処理 671t 369 5,460 4,091 2,051 631 13,273
合 計 2,286t 371 5,664 4,185 2,054 639 15,199
県外処理が87.3%を占めている。

産業廃棄物について県外処理を見ると
廃プラ 7,341 汚泥 4,941
廃油 3,645 廃酸 5,691
廃アルカリ 3,585 動植物残渣 5,245
動物死体 7,830 その他 5,743
合 計 41,021

 岩手県における産業廃棄物排出量は、 355万トン県外搬出が5.4万トンである。 参考までに記述するが、 いわてクリーンセンターの13年度、 処理量は、 5.2万トンである。 岩手県で排出する量の1.4%である。
 一般廃棄物と産業廃棄物との共同処理について考察すれば、 現行法上では、 焼却処理が考えられる。 盛岡・紫波地区環境施設組合では、 工期12年から14年に80t/24h2基のガス溶融炉の工事が進められている。 この地区の一般廃棄物収集量は, 70t/日である。 このような導入が県内に進めば、 産業廃棄物の共同処理も可能となる。 ただし、 ガス溶融炉によるスラグ、 アッシュ等の精錬処理が必要である。
 いわてクリーンセンター方式の推進については、 いわゆる公共関与による県北地区に有機性廃棄物のリサイクルと焼却処理施設を整備するとしている。
 処理業者育成と機能分担については、 期待される分野であり、 協会の事業活動にも多大な効果をもたらす。 13年度試行事業として県と連携して平成14年1月〜3月まで第3水曜日に 「廃棄物相談日」 を開設している。 また、 会員の資質の向上と協会運営強化を期すために、「組織検討委員会」を設置し、 姿勢を正すこととしている。
 その他に行政による許可業務の迅速対応に期待し、 申請者の利便性に配慮し、 環境コンサル・行政書士会等による指導を実施することとしている。

2) 循環型社会形成の制度研究会報告書
 県は、 平成13年2月から循環型社会形成に必要な制度改革を行うために学識経験者による研究会を設け検討を重ねて8月に報告書をまとめた。
 その概要は、 次のとおり
(1) 野外放置物等への規制
 野外に不適正に保管された有価物の放置、 または、 有価物を装った廃棄物の不法投棄に対する規制
(2) 建設廃棄物への規制
 岩手県における平成12年度、 不適正処理された産業廃棄物について見ると、 「木くず」 38%、 「がれき類」 27%で合計65%が建設廃棄物である。 業者別で見ると排出事業者が70%収集運搬業者が6%処分業者が24%である。 このことから建設関係者の廃棄物処理対応に何らかの規制がかけられる。
 そのために、 建設工事に伴う産業廃棄物の処理方法、 一定規模以上の工事については、 発生量、 排出量、 最終処分量等の届出制度を導入する意向である。
(3) 不法投棄等に過料・点数制による規制
 排出者が不法投棄等をおこなった場合は、 過料を科し、 処理業者が行った場合は、 点数制で許可に関与するというものである。
事業者保証金制度の導入
 不法投棄による現状回復の財源を確保する目的に産業廃棄物処理業の許可に際に、 保証金の納付、 違約金等について県と契約を締結するとしている。
(4) 負担金徴収制度
 他の都道府県からの廃棄物搬入に際し、 事前協議時に負担金を納入する制度である。 北東北3県については、 減額又は免除の措置をとるとしている。

3) 中央環境審議会 (廃棄物・リサイクル部会) H.13.12.18付
 平成13年8月から、 廃棄物・リサイクル基本問題専門委員会により、 「廃棄物の定義・区分のあり方」 「リサイクルにかかわる廃棄物処理業・施設に対する規制のあり方」 「排出者責任・拡大生産者責任のあり方」 等を検討開始。 この検討は平成13年9月以降9回にわたり各種関係団体から意見聴取し、 検討結果が公開されたが最終結果は今後にいたる。

ま と め
 岩手県における今後の廃棄物処理について、 現行法による法規制では対応が困難であるとしている。 その根拠としているのが 「青森県境における不法投棄事件」 であるとしているが、 このことによる廃棄物処理の規制強化は、 適正であるか疑問が残る。 適正処理は、 生産、 消費等にかかわる諸条件が整い、 社会システムが連動しなければならない。
 具体的には、 県民に理解されるよう現行法の説明が必要であり、 産業界に対する排出者責任の重要性、 廃棄物処理施設の迅速で適正な配置、 国、 県、 市町村による適正処理への支援姿勢等による協調が必須要件である。 その上で規制強化であるべきで、 先に規制強化の法制化は、 管理社会づくりを印象づける。 現時点での法制化は、 他県、 他地域とのバランスの取れたものでなければ、 法のもとの平等、 人権問題に触れる恐れがある。 又、 「廃棄物処理」 は、 適正・迅速・安全であるようあらゆる立場の人々が協調しなければ環境は悪化する。 環境が保全され、 社会生活とバランスの取れた意識がこれからの社会である。


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