COLUMN一灯

日々のうるおい

盛岡市医師会 岩動 孝 先生

長年飼っていた猫「たま」が死んだ。長男の細君がアパートで可愛がっていたが、ある日、アパートのエレベーターに貼り紙があり「このアパートはペット禁止です。しかし猫を飼っている人が居るようです。規則を守って下さい」と書いてあったという。それを見て、あわてて我が家に預けたのが始まりである。もう7〜8年も前のことである。

この話には後日談がある。同僚医師の集まりで、ある医師が「アパートで猫をたくさん飼っている。ペット禁止だと貼り紙されたが、構わずに飼い続けている」と言う。私が「もしかしたら○○アパートではないか?」と尋ねるとその通りだという。真面目な当家の嫁殿は、自分のところが言われたのではないのに、あわてて我が家に避難させたわけであるが、そのような健気な心掛けが私は好きである。

その後、当家の一角で可愛がっていたが、近づくと喉を「ゴロゴロ」させて脚にまつわりついて来るし、とても可愛いものである。室内で飼っているので、餌やり、排せつの後始末など、毎日やらなければならないことがあり、それも毎日となると大変である。毎朝「猫じゃんけん」なる儀式が執り行われる。「じゃんけんぽん!」で負けた人がその日の朝の「たま」の世話をするのである。ジョイスに行って「猫砂利」を飼うのも定期的な仕事になった。

我が家は「託児所」のようなものであり、毎日孫たちが5人やってきて、遊んで、食事をして、夜になると母親に連れられて帰宅するが、その孫たちも「たま」をとても可愛がっていた。長男のところの孫2人(男の子)が生まれる前から「たま」は我が家の家族になっていたが、孫はすでに7歳。「たま」は13歳ぐらいになっていたのだろう。

8月10日の朝、見に行ったらすでに冷たく、硬くなっていた。早速、動物霊苑の方に来てもらい、簡単な儀式を行って葬ったが、「たま」の遺体を見ながら男の子の孫たちが声を出して泣いていた。私は今の世の中で、子供たちがよく育っていると思い、心から満足であった。

我が家では、孫たちのために家庭菜園を作り、キュウリ、ナス、トマト、プチトマト、ピーマンなどを収穫している。食事時には子供たちが小さな庭に行って両手いっぱいに収穫してきたキュウリなどをみんなで食べている。しかし、秋になって、次第に枯れてきてついには朽ち果てる頃になると、子供たちはみんなで「トマトさん、有難う」などと言って悲しんでいる。

ペット、野菜、野鳥、昆虫、何にでも興味を示し、何に対しても精いっぱいの愛情を感じながら育って行く孫たちに大いに期待している。

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あとがき

2009年8月30日(日)、後年、日本の政治が大きく変わってしまった「8・30」と称されるような記念日になるかもしれない。民主党の圧勝は、4年前の小泉郵政選挙で小選挙区制の選挙手法が大きく変化したことが、既に立証済みであったのに、自民党も国民も投票箱を開け終えるまでは、これほどの逆な現象が起きるとは思っていなかった。とにかく、負の遺産しか残さなかった小泉政治は、「自民党をブッ潰す」という役目を果した。民主党の最初の仕事は、50年間の自民党政治の洗い直しになるだろう。とにかく、日本という国が潰れないことを願うばかりである。

政権は変わっても一気に景気が回復するものでもないが、人の心は移り気である。直ぐに結果を求める。スピード時代の世の中、待つことを忘れてしまった現代人の性である。早速、民主党の政策にイチャモンを付け始める。もうすこし時間をかけてみていても良いと思うのだが…。景気の回復は、到底、1年間では済みそうも無い。医療機関の倒産は今年7月で昨年1年間の倒産件数を超えてしまっている。自殺者も10年間連続3万人を超していたが、今年は4万人を越えそうな勢いである。厚労省の動向は、長妻厚労相が不気味に沈黙し、その方向性も不明である。医療問題も山積、年金、介護、不況下での雇用問題と多くの未解決の案件を抱えている。民主党は追求する側から追求される側の全く逆の立場になった今、どうするんだろう?

「いわて医師協同組合」・眞瀬理事長は、この政権交代を予測し、更に厳しい経済環境になりそうだなという視点で、組合員の利益のために骨身を惜しまずという決意である。

菅原 克郎

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