特集

「生命保険を科学する」

ドクターの陥りやすい落とし穴(5)

〜ガン保険を選ぶための新視点〜

株式会社インシュアランス・ラボラトリー 
代表取締役 佐 藤 正 彦

 今回は、殆どの方が関心をもつ「ガン保険」です。ガン保険はテレビCMなどでもよく目にする商品ですね。通販等で加入していらっしゃる先生も多いのではないでしょうか?
 ということは、パンフレットを見て自分で判断しなければならないということですので、選ぶポイント、パンフレットに書かれていることで注意すべき点などを補足したいと思います。

ガン保険のパンフレットに書かれている説明には

というものが多いようです。
 ガンは確かに40代以降、罹患率が急増します。統計でも、日本人の2人に1人はガンになる*と言われています。ガン保険は決して高い保険ではないのでご心配なら加入しておくことをお勧めいたします。が、パンフレットに書かれている「多額の費用がかかります」という説明は気になりますね。自己負担総額〇〇万円という金額には「見舞い返し」「家族の交通費」「患者の交通費」「入院前の通院費」「入院時の食事代」まで入っており、これはガンに限ったことではないのに??とちょっと不思議な気持ちになります。 逆に高額療養費の払戻しは含まれていません。ガン治療は高いぞ!って強調したいのでしょうね。
*東京大学医学部付属病院 放射線科准教授 緩和ケア診療部長 中川恵一著「ビジュアル版がんの教科書」

●ガン保険を選ぶポイントは?

 ガン保険の保障内容は、@入院給付金 A手術給付金 B診断給付金 の3つが基本です。その他に、通院給付金、ガン死亡保険金、高度先進医療給付金、健康お祝金など、各社様々な特約が付加できるようなっています。特約は別として、基本の3つの給付金の中でどこに注目したらよいのでしょうか?
 時間軸で考えてみましょう。何十年か先のガン治療はどのようになっているでしょうか。入院や手術が必ず行われるでしょうか。入院給付金は入院しなければ給付されません。手術給付金は手術しなければ給付されません。将来のガン治療で入院や手術をしなくなる可能性があるとするなら(現在でも統計によると、手術を行うのはガン患者の70%と言われています)、現在加入するガン保険を将来も利用価値あるものとしてくれるのは、診断給付金です。診断給付金はガンにかかっただけで、入院しなくても手術をしなくても給付されるものだからです。

●診断給付金も商品によって異なりますので、以下の点にご注意ください

給付回数 ⇒ 1回だけ給付という商品と、何回でも給付という商品があります。
また何回でも給付という商品には、2回目以降に入院を条件とするものとしないものがあります。何回でも給付という商品の2回目以降の給付は、前回の給付から2年以上経過していることを条件としています。

上皮内新生物の取扱い ⇒ 上皮内新生物(子宮頸部の上皮内ガン、大腸の粘膜内ガン、皮膚のボーエン病など)の場合、診断給付金が1/10あるいは1/2しか支払われない商品と、悪性新生物(一般的なガン)と同様に全額支払われる商品があります。

●その他の給付金で注意することは?

通院給付金 ⇒ 入院後のガン治療のための通院に限られますので、入院しないで通院した場合は給付されません。

手術給付金 ⇒ 一般的には放射線治療、温熱療法なども条件付で給付の対象となります。

高度先進医療給付金 ⇒ 一般的には厚労省で定められた高度先進医療が対象となります。

●保障期間は?

・今は、殆どが終身保険(一生涯の保障)です。5年や10年といった定期保険(期間の定まった保険)もありますが、ガン保険の場合は終身タイプの方が合理的でしょう。5年後や10年後にガン保険が不必要になるわけではありませんし、定期タイプは更新できますが保険料が高くなりますので。(終身タイプの保険料は変わりません)

パンフレットを読むときのコツ
  • 小さい文字や、※マークの付いた部分を注意深く読むこと。
  • 出ない場合はどんなときかを注意深く知ること。

*パンフレットは商品の良さを訴えるツールですから、優れた特徴が強調されています。例えば、ガン保険の場合は「入院給付金は日数無制限で何日でもお支払いします」「手術給付金は回数無制限で何回でもお支払いします」と書かれています。これも??ですよね。ガンで何ヶ月も入院したり、何十回も手術をすることがあるでしょうか。その前に亡くなってしまいますよね。商品の特徴を理解するためには面倒でも小さい文字の部分をよく読んで理解してください。

*ガン保険を選ぶときの注意点を解説しましたが、詳しくはパンフレット・約款をよ くご覧になって、ご自分のニーズに合った保険をお選び下さい。

ポイント

 一口にガン保険といっても内容はさまざまです。そして、ガン保険において特に注意していただきたいのは、加入してから保険の責任開始(保障が始まる)まで90日(または3ヶ月)の待ち受け期間があることです。つまり、せっかく加入しても3ヶ月以内にガンと診断されてしまったら保険は無効になってしまうということです。

 次回、特集は「陥りやすい落とし穴 その6〜医療保険およびがん保険は契約者に注意が必要です〜」

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