特  集

環境とこれからの医療活動
環境カウンセラー 五ノ井   稔
 自然環境は、 社会経済活動に必要な資源やエネルギーを供給し、 人間の生存にとって欠かすことの出来ないさまざまな恩恵を与えています。 しかし、 森林の減少、 砂漠化、 酸性雨の被害、 種の絶滅、 地球温暖化及び有害環境汚染物質による環境汚染などが進行し、 その結果、 自然環境に対し多大な負荷を与え続けることになり、 社会経済システムと自然環境のバランスが崩れ自然環境の質の低下があらゆる場面で進展しています。
 今後の地球の目指すべき社会のあり方は 「持続可能な開発」 であると提唱され、 それを 「将来の世代の欲求を満たしつつ、 現代の世代の欲求を満足させるような開発」 と定義されました。
「持続可能な社会」 を実現させる為には、 日常の社会 (医療) 活動において環境負荷と結びつけて、 社会全体で環境負荷の低減を図らなければなりません。
 今年度4回にわたり、 我々の住んでいる地球のおかれてる現状を考え、 「持続可能な社会つくり」 について皆さんと一緒に考えていきたいと思います。

T 地球環境問題 4月号
U 地球温暖化防止について 7月号
V 持続可能な社会を作るために 10月号
W 医療活動と廃棄物 1月号

T 地球環境問題

1. 進む地球温暖化

  • 人間活動が温室効果ガスを大量に排出した
    地球の大気には二酸化炭素 (CO2) などの温室効果ガスが含まれている為、 地球の平均気温が約15℃に保たれています。 ところが1750年頃に始まった産業革命以来、 石油や石炭のなどの化石燃料の大量消費や森林の伐採などにより、 大量のCO2などの温室効果ガスが大気中に排出されました。 このため現在の大気中のCO2の濃度は産業革命前の約1.3倍と過去42万年間で経験したことのない高い値となっています。
  • 異常気象の変化を引き起こす
     この温室効果ガスの増加は、 地球の気候システムのエネルギーバランスを崩し、 気温の上昇や海面の上昇、 異常気象などの変化を引き起こし、 自然生態系や人間社会に悪影響をもたらすと予測されています。
  • 温暖化の原因は人間活動にある
     気候変動に関する政府間パネルで 「最近50年間に観測された温暖化の大半が人間活動に起因している」 と報告しています。
     2100年には気温が1.4〜5.8℃上昇、 海面は9〜88p上昇すると予測しています。

2. 温暖化の科学的知見

  • 地球の平均気温は20世紀に約0.6℃上昇した
     地球の平均地上気温が20世紀中に約0.6℃上昇し、 1990年代の10年間は、 過去1000年で最も温暖な10年となりました
  • 多発する異常気象
     暑い日が多くなり、 台風の最大風力、 降水量が増大する
     最近、 洪水や干ばつ、 エルニーニョに関連した異常気象が、 世界各地で観測されています。 地域によっては将来の異常気象の発生の仕方が変化されると予測されます。

3. 日本の気候変化

  • 近年の日本の気候の変化
     日本全国の年平均気温は上昇傾向にあります。 都市化の影響を除いて、 過去100年あたり約1.0℃上昇し、 都市部では2倍以上の上昇が観測されております。 また、 月平均気温の異常高温の発生数は増加傾向にあり、 逆に異常低温の発生数は減少しているなど、 温暖化に特徴的な現象が生じています。 今後100年間で日本では4〜5℃上昇すると予側されます。
  • 台風が強大化し降水量も増加する。
  • 降雪量が大きく変化する。
     温暖化が進むと冬季に降る雪が雨となり、 積雪量が大きく変化すると予測されます。
    大雪による交通障害などは減りますが、 一方では積雪によって守られてきた植生や、 春先の雪解けを利用していた農業などに影響を与えると予測されます。

4. 海面の上昇

  • 2080年までに40p海面が上昇した場合、 沿岸域や沿岸低地に住む7,500万〜2億人が海面上昇などの影響で移住を余儀なくされる恐れがあります。
     日本では1mの海面上昇で、 全国の砂浜海岸の9割以上が失われます。

5. 人間の健康への影響

  • 気候変化は、 夏季の気温上昇による熱中症の増加だけでなく、 マラリアやデング熱と言った伝染病を媒介とする生物の生息環境の変化を通じても、 人間の健康に影響を与えます。
     日本においても、 気候変化により、 蚊の分布域が北上・拡大しマラリアやデング熱などのリスクが増加します。
引用文献 環境省 STOP THE ONDANKA