特集
「生命保険を科学する」
ドクターの陥りやすい落とし穴(8)
〜学資保険・こども保険を考える〜
今回は、学資保険あるいはこども保険と呼ばれている保険について考えてみましょう。お子様が大学に入るときに入学金などの大きな出費が予想されるので、加入をお考えの先生も多いのではないでしょうか。保険会社によって商品の名称が様々ですので、ここでは呼び方を学資保険に統一して説明します。
■学資保険のメリット・デメリット
<メリット>
- ・確実に貯蓄する事が可能
- 学資保険を利用することで安心して一定の教育資金を確保することが出来ます。
- ・保険料の払込免除
- 契約者が高度障害状態になった場合、または死亡時には、それ以降の保険料の払込が免除されます。
- ・特約付加による保障充実
- 特約を付加させることによって医療保障を充実させることが出来ることに加え、入院や手術時、所定の病気にかかったときなど、細かい設定が可能なプランがあります。
- ・解約返戻金
- 学資保険は掛け捨て型商品ではありませんので、保険を解約した場合には「解約返戻金」が支払われるというのも安心です。
- ・契約者貸付
- 解約返戻金の一定範囲内の割合(主に8割から9割とされる場合が多いようです。)の金額を限度に、加入している保険会社から理由を問わずに借入が出来ます。
<デメリット>
- ・利回りの低さ
- 学資保険の加入時期やタイミングに依存した問題になってきますが、多くの学資保険では元本割れをしてしまうか、もしくは利回りが低いという問題があります。
- ・インフレ時のリスク
- インフレの進行とともに学資保険の実質的な資産価値は、急激な価格暴落を挙げるということになります。
- ・長期間に渡っての契約
- 学資保険は基本的に、子供が小さいうちから、子供が成人する頃の時期まで長期間に渡っての契約内容がほとんどとなります。
■学資保険は大きく分けると2タイプ
学資保険の大きな目的は、将来の大きな教育費の準備でしょう。ということは、貯蓄性が一番の目的という先生が多いのではないでしょうか。学資保険を貯蓄性で分類すると2タイプに分かれます。元本アップするものと元本アップしないものです。
元本アップというのは、受取額が支払った保険料より大きいということです。学資保険は貯蓄性の保険ですので、当然、損はしていないと思いがちですよね。「えっ、払った額より受取額が少ない学資保険ってあるの?」と意外に思われる先生もいらっしゃるかも知れませんが、学資保険というのは実は、受取額が支払額より少ない(元本アップしない)商品の方が多いのです。是非一度、毎月の保険料の支払い総額と、受取総額を比較してみてください。
では、なぜ元本アップしない商品があるのでしょうか。それは保障がある意味充実しているからです。
どのような保障かと言うと、各社様々ですが例えば……
- 親に万が一があった場合に保険料の支払が免除される(もちろん受取額は変わりません)。
- 親に万が一があった場合、満期を迎えるまで育英年金のような保険金がもらえる。
- 子供が病気やケガで入院したときに給付金がもらえる(子供の医療保険)。
- 子供自身が亡くなったときに死亡保険金がもらえる。
などが多いようです。このように、保障が充実している学資保険をここでは、「保障重視型」学資保険と呼びましょう。
では、逆に「貯蓄重視型」の学資保険はどのような仕組みなのでしょうか。
保障を簡易な内容にし、貯蓄性を重視している構造が多いようです。
例えば……
- 親が亡くなった場合は、保険料の支払が免除される(受取額は変わりません)。
- 但し子供が亡くなった場合は、いままでの払込保険料が戻ってくるだけ。
といった内容です。
■学資保険の選び方は?
各社、それぞれに特徴がありますので、まずはパンフレットを集めて比較検討してみるのがいいでしょう。保障重視型の場合は、どのような保障が付加されているのか、他の保険と重複していることはないのかを確認することが必要です。
- 親に万が一があった場合に保険料が免除される⇒「貯蓄重視型」でも同様の場合あり。
- 満期を迎えるまでの育英年金が支払われる⇒現在十分な保障の保険に入っていれば、必要ない場合あり。親が加入している保険の保障と重複しているパターンをよく見かけます。
- 子供が入院したとき給付金が支払われる⇒満期(例えば 18歳)で入院特約も消滅します。だとしたら、終身医療保険に加入しておいた方がよいという判断もあります。
- 子供自身が亡くなった場合、死亡保険金が支払われる⇒子供が亡くなって死亡保険金が必要かどうか……?
貯蓄重視型の場合は、貯蓄性の高さが他の商品と比べてどうなのかを判断するとよいでしょう。しかし、現在のような低金利時代ではあまり期待できません。現在、発売されている中で最も貯蓄性が高いといわれている学資保険でも、お子様が18歳時の返戻率が112%前後です。学資保険の中では断トツで貯蓄性が高いようですが、18年間もの長期間を経ての112%です。年利に直すと1.2%の利回りに過ぎません。銀行の積立定期預金よりは若干いいですが、他に比較すべき商品もありそうですね。しかも、途中解約すると、どこの保険会社のものも殆どが元本割れするようです。
その他の選択基準としては……
- 満期が何歳なのか⇒17歳、18歳、20歳、22歳などが多いようです。あるいは、12歳、15歳、18歳というように中学、高校、大学入学時に受取れるものもあります。また、ちょっとした注意点ですが、18歳と言っても大学入学金支払時に合わせて出るとは限りません。18歳の契約応答日に出るというのが一般的でしょう。入学後の受取りでしたら、他の方法で資金を繋ぐ必要があります。
学資保険を選ぶのでしたら、以上のようなことを比較検討しながらご判断ください。
ポイント
お子様が誕生されると内容をよく検討することなく、とにかく「お祝い」に学資保険とお考えになる親御さんも少なくないようです。
お子様の保険も、状況や目的にあった保険を選択しましょう。