地区だより(6)
遠野物語百年祭
遠野市医師会 新 里 滋
「この話はすべて遠野の人佐々木鏡石君より聞きたり。」と始まる柳田國男著『遠野物語』は、今からちょうど100年前の明治43(1910)年6月14日に誕生しました。
わずか350部だけ自費出版されたこの本は、のちに日本民俗学の原典として、さらには日本文学の不朽の名作と評価され、今日まで多くの人々を魅了し読み継がれてきました。
今年、発刊100周年を迎えた遠野市では、改めて『遠野物語』を見直し、元気なまちづくりに活かしていこうと様々な記念事業に取り組んでいます。
去る6月12日、13日には「遠野物語100年祭」が開催され、遠野市民センター大ホールでは、子ども語り部や郷土芸能、序文朗読、遠野小学校の児童200名による「遠野の里の物語」の合唱で感動の舞台が繰り広げられました。
一方、野外では中心市街地の蔵の道ひろばで神楽やしし踊りが披露されたほか、語り部スポットでの昔話の競演、そして「ジンギスカンストリート」が行われました。
「ジンギスカンストリート」は、遠野青年会議所が「100年祭」の盛り上げに一役買おうと企画したもので、メインストリートを通行止めにし、そこに約500席分の椅子とテーブル、それから遠野名物の穴あきバケツに固形燃料、ジンギスカン鍋をセットして市民も観光客も式典参加者もみんなで楽しくジンギスカンが食べられるようにと準備されました。
当日は晴天で、席もほぼ満席の盛況。約50年前から始まり、今や遠野を代表する食文化と評され、市民一人当たりの年間消費量は日本一と言われる「遠野のジンギスカン」の面目躍如でした。会議所のメンバーは、次の機会にはもっと規模を拡大して、ギネス記録にも申請したいと夢を膨らませていました。
『遠野物語』は、力強く「遠野物語の日」宣言をした小学生をはじめ、まちの賑わいのために行動を起こした会議所など市民一人ひとりの手によって、今後も遠野の文化の核として、また人々の精神的支柱として、次の100年後まで大切に引き継がれていくことでしょう。