被災地現場レポート(2)
被災地現場視察記
いわて医師協同組合 事務長 坂 本 守
平成23年3月11日(金)午後2時46分、突然携帯電話の緊急地震情報の警告音が鳴りだした。携帯を取り出して開けて見ると、「宮城県沖で地震が発生。強い揺れに備えて下さい。」とあった。携帯を見た途端にグラグラっと揺れ出し、今までに感じた事がないような強烈な揺れになり、道行く人達もガードレールに掴る人、電柱に掴る人を目の当たりに見て、「大変だ」と思った。
私はその時丁度、奥州市のクリーンセンターと打合せを終えて、事務所に帰る途中でした。
地震直後から、停電で信号機も作動が止まり、道路は大渋滞であり、紫波から1時間30分を要して事務所に戻りました。
車両のテレビ報道に見入ると、沿岸地区は大津波に見舞われ、甚大な被害が発生していたので、特に沿岸地区の組合員である先生方が無事に避難されたか心配になりました。
翌日以降も余震が続き、報道される度に被害状況が拡大されて伝えられている日が続きました。
ガソリン不足が生じて、避難所はもとより自力で避難している人達にも支援物資を届ける事すら困難な状況に陥ってしまいました。
被災された多くの組合員の先生方は、診療所が被害を受けても、診療を再開されていらっしゃる状況を各郡市医師会等から確認出来ました。
当組合として、先生方に何か支援出来る事が無いだろうかと思っていましたが、ガソリンが買えない、物資が手に入らない状況でした。そんな中、全国医師協同組合連合会がマスクや手指消毒液を中心とした支援物資の他に、ガソリンまでも積載していただき、トラックのチャーター便を手配してもらい、25日(金)に支援物資が到着しました。
翌週29日(火)から特に被害が甚大であった宮古市、釜石市、大船渡市、久慈市の診療を再開している先生方に当組合の軽自動車2台の後部座席を倒しバン型にして、支援物資を積めるだけ積み込み、訪問を開始しました。
3月29日(火) 宮古市訪問
2台の車で、県医師会館を午前8時30分に出発。区界付近では、多くの残雪があり行き交う車も多く、自衛隊の緊急車両が目立った。途中、「やまびこ館」でトイレ休憩。自衛隊員が沢山で、トイレも長い列が出来ていた。
午前10時20分、最初の訪問先に到着して、いよいよ宮古市内へと車を走らせた。市内に入る程、被害状況が甚大であり街中まで何艘もの漁船が流されており、津波の大きさを物語っていた。
宮古市は18名の先生方を訪問しましたが、皆さんが何よりもお元気そうなので救われました。
3月30日(水) 釜石市訪問
午前9時、県医師会館を出発。途中の宮守村付近から自衛隊の緊急車両や物資を運ぶトラックが多くなり、釜石道の出口では500メートル以上の渋滞。市内も信号機が消えたままで渋滞だったが、何とか予定通り釜石市医師会に到着し、再度状況を確認して先生方への訪問を開始。
釜石駅から海寄りになると、景色は一転して道路の両側には瓦礫の山。
釜石市は6名の先生方を訪問しましたが、お届けした支援物資に感謝の言葉をいただきました。
3月31日(木) 大船渡市訪問
午前7時40分、自宅を出発。遠野市宮守町付近から吹雪だったが、住田町に着く頃には雪が止んだ。
大船渡市は国道45号線から海側が津波による浸水の被害があり、街中はあちこちで通行止めにして瓦礫の撤去作業をしていた。やはり信号機が消えたままで市内は渋滞していましたが、何とか11名の先生方を訪問しました。
水道も未だ復旧していない地区もあり、お持ちした支援物資に大変感謝していただきました。
4月6日(水) 久慈市訪問
午前8時30分、県医師会館を出発。最初は津波の被害が甚大な野田村役場を目指した。
野田村役場は津波により1階部分が浸水したが、何とか復旧作業が進んで災害対策本部が開設されており、多くの地元住民の方が支援物資を求めて集まって来られていた。
野田村役場の災害対策本部で津波の被害の為、仮診療所を開設された押川先生の場所を確認して無事に支援物資をお届け出来ました。
その後、久慈市内の全組合員の先生方を訪問し、3月11日(金)に発生した震災当日の様子を伺いながら、皆様の無事を確認出来て安心しました。
3月29日(火)から4月6日(水)の4日間、宮古市、釜石市、大船渡市ならびに久慈市の4地区の先生方に全国医師協同組合連合会からの支援物資をお届し、先生方には大変感謝していただきました。多くの先生は、診療所に被害があっても、他のスペースを活用されて診療されていらっしゃいました。来院されている患者さんの表情は、とても安心されている様子が窺えました。
あらためて、地域医療の重要性を認識した4日間であるとともに、懸命に診療に当たられていらっしゃる先生方に、心から感謝致します。
今回の被災地訪問は、診療が再開されている組合員の先生方を訪ねましたが、未だに多くの先生方は診療の再開に向けて懸命に復旧に取組まれていらっしゃいます。これからも、診療が再開された組合員の先生方のところへ訪問して参ります。
1日も早い復旧・復興をお祈り申し上げます。
「 がんばろう 岩手 」
「 がんばろう 東北 」
市街地まで押し流された漁船(宮古市)
自衛隊の緊急車両(釜石市)
瓦礫の散乱する市内(釜石市)
盛駅付近(大船渡市)
診療を再開した後藤医院(宮古市)