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ここから始めるマイナンバーのQ&A S&Nパートナーズ法律事務所 弁護士 永谷 修一

「マイナンバー」という言葉をテレビやインターネットのニュースなどで一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。最近は、大きな書店でも「マイナンバー」に関する特設コーナーを設け、関連書籍を山積みにしています。もっとも、私の周囲を見回してみると、マイナンバー制度についてその内容をよく理解しているという人は極少数であるのが現状のようです。

そこで、本稿ではマイナンバー制度について、全く知識を持っていない方を対象に同制度の概略をQ&A方式で解説したいと思います。

Q1 マイナンバー制度とは何ですか?

A1 マイナンバー制度(正式名称「社会保障・税番号制度」)とは、国内に住民登録をしているすべての個人(中長期在留者や特別永住者などの外国人も含む。)を対象にそれぞれ12桁の番号を割り振り、社会保障・税・災害対策の行政手続において活用する制度です。

なお、設立登記をした法人に対しても13桁の法人番号が割り振られます。マイナンバー制度としての番号は、個人番号と法人番号の2種類がありますが、マイナンバーと呼ぶ際は個人番号を指します。マイナンバーは、プライバシー保護の観点から目的外利用等に関して厳格な制約があるのに対し、法人番号は原則として誰でも自由に使用することができます。

Q2 マイナンバー制度を導入する目的は何ですか?

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A2 政府は、マイナンバー制度を導入する目的について、次の3点を説明しています。

【公平・公正な社会の実現】

所得や他の行政サービスの受給状況を把握しやすくなるため、負担を不当に免れることや給付を不正に受けることを防止するとともに、本当に困っている方にきめ細かな支援を行えるようになります。

【国民の利便性の向上】

添付書類の削減など、行政手続が簡素化され、国民負担が軽減されます。また、行政機関が持っている自分の情報を確認したり、行政機関から様々なサービスのお知らせを受け取ったりできるようになります。

【行政の効率化】

行政機関や地方公共団体などで、様々な情報の照合、転記、入力などに要している時間や労力が大幅に削減されます。複数の業務の間での連携が進み、作業の重複などの無駄が削減されるようになります。
出所:内閣官房「マイナンバー広報資料」

Q3 マイナンバー制度の実施スケジュールを教えてください。

A3 平成27年10月以降順次、市区町村から、住民票に登録されている住所あてにマイナンバーが記載された「通知カード」が送られてきます。平成28年1月以降、「通知カード」と共に送付される申請書を市区町村に提出することにより、「個人番号カード」の交付を受けます。「個人番号カード」は、ICチップ付きカードになっており、表面に氏名、住所、生年月日、性別と顔写真、裏面に個人番号が記載されています。一般的に身分証として利用できるほか、事業主や行政機関等に個人番号を提供する際の本人確認として利用することができます。

平成28年1月以降、社会保障・税・災害対策の行政手続にマイナンバーが必要となります。例えば、税務署に提出する確定申告書にマイナンバーを記載することになります。

Q4 マイナンバーの利用される範囲を具体的に教えてください。

A4 平成28年1月の制度開始時には、社会保障、税、災害対策の行政手続において、マイナンバーが利用される予定です。

【社会保障分野】

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【税分野】

国民が税務当局に提出する確定申告書、届出書、調書等に記載。

【災害対策分野】

被災者生活再建支援金の支給事務や被災者台帳の作成事務等に利用。
出所:内閣官房「番号制度の概要」

将来、左記の分野でのマイナンバーの利用が予想されます。特に医療機関では、4の動向に注意する必要があります。

  1. 戸籍等に係る事務
  2. 旅券や邦人保護等に係る事務
  3. 金融機関による顧客の名寄せ、本人確認および口座名義人の特定・現況確認に係る事務
  4. 医療・介護・健康情報の管理および医療情報の蓄積・分析等に係る事務
  5. 自動車の登録に係る事務

Q5 マイナンバー制度が医療機関に与える影響を教えてください。

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A5 一般事業者としての側面と医療事務に関する側面の2つの側面からマイナンバー制度の影響を受けることになります。

一般事業者として、職員の給与厚生業務等に関わる社会保険や源泉徴収税務関連手続き、弁護士や税理士等への報酬等の支払いや不動産賃料の支払いに伴う支払調書作成業務等でマイナンバーを利用することになります。このようなにマイナンバーに係る事務を行う機関を「個人番号実施者」と呼び、一般事業者の人事・経理・労務管理等の部門等が該当します。したがって、医療機関も例外ではなく、一般事業者としての側面、すなわち職員や取引相手のマイナンバーを取り扱う場面で影響を受けます。

一方、現在の番号法は、にマイナンバーを利用する事務実施者を「個人番号実施者」と定め、主な機関として行政機関・自治体等、民間事業者の健康保険組合や企業年金の担当部署等に限定し、医療機関を含めていません。もっとも、医療機関の業務自体が主体的にマイナンバーを利用しなくても、医療機関の証明や医療機関作成の書類添付を要する手続については、その申請書類にマイナンバーが記載されていることが考えられます。また、患者から身分証明書として個人番号カードの提示を受ける可能性もあるでしょう。

したがって、医療事務に関する側面においてもマイナンバーの取り扱いに注意する必要があります。

Q6 マイナンバーを職員から取得するときに何をしなければならないですか?

A6 利用目的を明示し、本人確認をすることが必要です。

マイナンバーを取得する際は、利用目的を特定して明示する必要があります。なお、源泉徴収や年金・医療保険・雇用保険など、複数の目的で利用する場合は、まとめて目的を示しても構いません。また、本人確認では、(1)正しい番号であることの確認(番号確認)、(2)手続きを行っている者が正しい持ち主であることの確認(身元確認)が必要です。

Q7 マイナンバー制度の施行に備え、医療機関が準備しておくことは何でしょうか?

イラスト7

A7 マイナンバー制度に対応するため、以下のステップで検討することが考えられます。

  1. マイナンバー制度を理解すること
  2. マイナンバー制度の対象業務の洗い出し
  3. マイナンバーの取り扱いルールの策定
  4. マイナンバーを取り扱う業務のシステム改修
  5. マインバー制度に関する運用ルールを職員に周知徹底すること

以上、現在まで政府が公表している広報資料等に基づいてマイナンバー制度の概略を解説してきました。さらに詳細な内容が知りたい方は、弁護士や税理士等の専門家に相談すると良いでしょう。

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