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特  集
「生命保険を科学する」
ドクターの陥りやすい落とし穴(1)
〜保障を考える〜
株式会社インシュアランス・ラボラトリー
代表取締役 佐 藤 正 彦

 お医者様という職業は、金融機関からは特別なマーケットと捉えられているようです。特に保険となると様々な方面からの勧誘で、ご家族の保険まで含めると数多くの生命保険にご加入されていることと思います。多くの先生方から生命保険のご相談をいただきますが、勘違いをされているケースがよく見受けられます。せっかく加入している生命保険が、その本来の目的や役割を果たしていないことが意外と多いようです。
 今回からその代表例と、どのようにしたら間違いを修正し、今後防ぐことができるかを『ドクターの陥りやすい落とし穴』としてご紹介してまいります。

 初回は、保障についてです。医療法人にされた先生を例にとって解説いたします。

■陥りやすい落とし穴 その1■

 「A先生は医療法人を設立されました。生命保険料は経費で落ち、節税になるからという理由で、会計事務所の勧めで生命保険の殆どを医療法人に契約者変更しました。」
   果たして本当にそうでしょうか?・・・
        受け取るときのことを考えてみましょう。
 確かに、生命保険は種類によっては保険料を経費にできるので、法人化したときの節税メリットのひとつに挙げられます。節税できるのは、保険料を払うとき(保険の入口)の話です。
 では、受け取るとき(保険の出口)にはどのようなことが起きるのでしょうか?

 A先生に医療法人設立の5年後に事故で“万が一”が発生したらどうでしょう? 
 法人契約の保険は、保険金の受取人も医療法人です。医療法人が受け取った保険金はどのようにご家族に渡すのでしょうか? これが保険の出口です。

 先生にとっては法人化後も個人の時とあまり変わらないと感じられるでしょうが、税法上は厳格に分かれています。医療法人からご家族に資金移転する方法は、先生の「死亡退職金+弔慰金」だけとなってしまいます。では、死亡退職金や弔慰金はいくら渡せるのでしょうか?

理事長の死亡退職金・弔慰金の一般的な計算式

死亡退職金・・・最終報酬月額×役員在任年数×功績倍率(3程度)
弔 慰 金・・・最終報酬月額×6ヶ月(業務外死亡の場合)  
   A先生の報酬月額(給与)が200万円としますと
       死亡退職金=200万円×5年×3=3,000万円
       弔 慰 金=200万円×6ヶ月 =1,200万円
   合計で4,200万円しか、医療法人からご家族に移転できません。

 医療法人で契約していた保険金が仮に2億円でも、無税(法人税)ではご家族に4,200万円しか移転できないのです。もちろん、4,200万円以上の資金を移転することはできますが、その場合は法人税(約35%〜40%)を支払った後のお金を移転することになってしまいます。

■ポイント■

 法人設立早期の保障は、個人契約で持つことが重要です。
 また、法人契約は節税だけに焦点を当てるのではなく、節税+退職金を目的に加入されることをお勧めします。収入保障型(死亡時から給与のようにご家族が月々○○万円もらえるという保険)の保険でしたら保険料は相当安くなります。
 さらに最近は、非喫煙健康体という料金設定の保険も増え、一般より30%くらい保険料が安くなります。「すでに加入しているからなぁ」と思い込まないでください。殆どの場合、今からでも保障を大きく、保険料を安くできる可能性があります。

次回、特集は「陥りやすい落とし穴 その2 〜保険期間を考える〜」
IWATE MEDICAL COOPERATIVE ASSOCIATION●No.63