特集
「生命保険を科学する」
ドクターの陥りやすい落とし穴(4)
〜医療保険選びのポイントと新視点〜
医療保険やガン保険などは、保険業界では“第3分野の商品”と呼ばれ、金融自由化の中で最も門戸の開かれた商品となっています。生命保険会社も損害保険会社も同様の商品を発売し、通販、インターネットなどでも購入できるようになりました。TV宣伝も盛んで、先生方も多くのDMを目にされていらっしゃるかと思います。
医療保険は多くの方が、なぜか“欲しい”と思っているので、様々な内容の商品が発売されています。どれがいいのか一概に比較できない感じですね。そこで今回は少々異なる視点での医療保険選びと、そのポイントとを解説したいと思います。
■医療保険って本当に必要なの?■
多くの方が、死亡保障の保険より医療保険を“欲しい”と思われているようですので、ここでは逆説的な見方をご紹介いたします。
●医療保険に対するいくつかの疑問点
- 急性期疾病で何日入院するでしょうか?これは先生方が一番よくご存じですよね。
- 逆に、パーキンソン、高度の痴呆などでは?私の父はパーキンソンで2年間入院して亡くなりましたが、入院給付金は120日分しか支給されませんでした。
- 入院給付金を受取るためには保険料を払い続けています。いくら払っていくら給付されるのでしょうか?
- 入院はお金がかかると言われますが、高額療養費の払戻しを含めると自己負担はいくらになるのでしょうか?
●保険料支払い総額は?
一般的な終身タイプ(1入院120日)の医療保険に入院給付金1万円/日で加入し、平均年齢まで生きたとして保険料総額を計算すると、概ね300万円〜350万円払い込むことになります。1入院60日の安いタイプの医療保険でも200万円〜250万円くらいは払い込みます。
●どのような対策がよいのでしょう?
もちろん、考え方は自由ですのでこれが正解というものはありません。例えば、個人的な「入院ファンド」のつもりで、運用し現金を作る方法もあります(保険担当者がこんなことを言うのもおかしいのですが…)。毎月定期積立ができる投資信託で運用し、入院に使わなくても済む時は他のことに利用することができます。現金の強さです。
でも、全く医療保険がいらないのかというと、そうではありません。10年定期タイプでしたら保険料が安いので、今後10年間にもしも入院した場合は運用より保険の方が得でしょう。
また、終身タイプの入院保険の場合は、最も安い保険料のものに1万円/日で加入する方法もあります。
■医療保険を選ぶときのポイント■
●基本的給付内容
- 基本的には入院給付金+手術給付金という構造になっています。
- 入院給付金は、かつては入院5日目から出るというものが殆どでしたが、現在は1泊2日から出るものが主流になっています。
- 入院給付金で注意しなければならないのは、「1入院あたり何日出るのか」と「トータルで何日出るのか」ということです。一般的には1入院あたり120日ですが、保険料の安いものには60日という商品が多いようです。トータルでは700日〜1,000日くらいが主流です。一度退院し、再度同一疾病で入院した場合、退院と再入院の間が180日以上開いていれば別入院として1入院120日を再度利用することができますが、180日開いていない場合は1入院として扱われます。例えば、入院70日で退院し、2ヶ月後に再度同じ病名で入院した場合は1入院見なされ、50日(120日-70日)までしか保険は適用されません。
- 手術給付金は、一般的には手術1回あたり入院日額×10倍、20倍、40倍が出るものが主流です。入院給付金が1万円/日なら、10万円か20万円か40万円です。どの倍率が適用されるかは、約款に詳細に記載されています。中には一定額しか出ない商品もあります。
●その他の給付内容
これは商品により様々です。女性特有の病気で給付されるもの、3大疾病で給付されるもの、成人病で給付されるもの、死亡保険金が給付されるものなど、各商品の差別化のポイントとなっています。パンフレットをよくご覧になってください。
●保険期間と保険料
- 最近は一生涯保障される「終身保険タイプ」が主流です。中には5年、10年という期間の定まった保障「定期保険タイプ」もあります。定期保険タイプは、保険期間終了時に同じ期間だけ更新することができます。
- 終身保険タイプは、解約返戻金が貯まる商品と貯まらない商品があります。解約返戻金が貯まるタイプの方が保険料が高く設定されています。保険料払込期間も終身払が主流ですが、60歳や65歳など、働いている間に払い込みを終了させることができる商品もあります。保険料は一定で途中で高くはなりません(中には65歳以降半額になる商品も発売されました)。定期保険タイプは保障期間と払込期間は同一となっています。終身保険タイプに比べ保険料は安くなりますが、更新時には保険料がアップします。
以上のような特徴を俯瞰しながら、パンフレットをよくご覧になってご自身のニーズに合った商品をお選びください。
■ポイント■
少々意外な考え方に感じられるかもしれませんが、いかがでしょうか。一生涯必要な保険の場合は、支払額と受取額の関係を時間軸で考えることも重要かと思います。
次回、特集は「陥りやすい落とし穴 その5〜がん保険を選ぶための新視点〜」