人物クローズアップ

人物クローズアップ vol.9

糖尿病の患者さんとは長い付き合い
無理なく年齢に見合った
診療スタイルで続けていきます

中の橋斉藤クリニック
斉 藤 文 子(盛岡市医師会)

盛岡の中心街で糖尿病を中心に診療

内科と整形外科を併設する中の橋斉藤クリニックを盛岡市の中心街にビル開業したのは平成19年のことです。この辺は会社や商店が多く、バスセンターも近いのでバスを利用していらっしゃる方も多いですね。中には買い物がてらにという方もいて、患者さんは幅広い年齢層にわたっています。

それまで15年間、中野地区で営んでいたクリニックは糖尿病が中心ではありましたが、地域密着型、地域の診療所という位置づけでした。ここでは、私は糖尿病を中心に診療しています。糖尿病は大学時代からの専門で、もう35年以上になりますが、最近は患者さんの診かたが学会でも変わってきていることを実感しています。糖尿病は全身病とも言えますから一応、診療の基準、目標値はあっても、それだけではなく毎日の食事、運動、仕事内容など生活そのものが反映されてきます。ですから患者さんに一様な治療はできないのです。

私の診療スタイルはそのことを踏まえ、杓子定規に糖尿病の数値だけを正常化することより、家族構成や生活の状況を把握した上でその方に合った治療を行っていくことです。医療費に困る人もいれば、忙しくてなかなか病院に来られない人、あるいは仕事の付き合いで宴会が多い人もいるでしょう。40代と80代の方では糖尿治療の目標も違うのではないか。それぞれのライフスタイルを重視しながら治療を継続し、合併症を起こさないようにすることが基本方針だと思ってきました。

例えば、80歳の方から食事の楽しみや晩酌の楽しみを取り上げて何になるのか? というのが私の考えであり、ライフスタイルを考慮しながら治療の妥協点を見つけ出していきたいのです。むろん、40代、50代の働き盛りの人が治療を怠ると10年後、20年後に重大な合併症が起きて生活に支障を来たしかねない。そういうことがわかっている年代の方は厳しく、しっかりコントロールしていきますが。

以前は数値を目の前に掲げて何が何でもそこまで持っていこうという傾向にありましたが、ここ数年、学会でもそういう診かたが取り入れられ、提唱されてきており、私の考えもあながち間違っていなかったなと思っています。

休日は海釣りで英気を養う

私がこのページに推薦していただいたのは、仕事もさることながら趣味の面も大きかったのではないかと思うのですが(笑)。ええ、私は釣りが大好きです。それも、もっぱら海釣りです。15年ほど前に同僚の先生に連れていっていただいたのがきっかけで、それが私の性に合っていたんですね。海釣りは船酔いや、女性の場合はトイレの問題もありますが、私は最初から大丈夫で、すぐに克服しました。

釣り場は重茂、山田、越喜来など三陸を中心に青森、宮城、秋田などで、冬になると東京湾や千葉、茨城にも行きます。特に私の性に合っているのは三陸の海。中でも南三陸町の志津川はカレイ釣りの名人たちのメッカで、そう簡単には釣れない難しい釣り場。船頭さんたちも厳しく、釣り人たちのレベルも高い。私もそこで大いに鍛えられ、腕を磨かせていただきました。

釣果はカレイ、ヒラメ、イカ、マダイ、キス、カワハギなどいろいろで、秋田では夜中の電気釣りにも挑戦しました。釣りに夢中になるあまり、船舶の免許を取って船を所有したこともあるんですが、自分で操縦しながら釣りをするのは至難の業で、これは両立しないことがわかりました。やはり、船の操縦はプロに任せるべきだなと(笑)。

自慢するようですが、釣り具メーカーや新聞社主催などの各種大会では、結構上位入賞を果たしましたし、震災前まで行われていた岩手県医師会の釣り大会では優勝いたしました。

釣りだけではなく魚料理も好きで、自分でさばきます。漁師のおじさんたちとの会話も豪快で楽しく、海はいいですね。けれども、3.11の震災後は行く回数も減ってしまいました。いろんな意味で遊びに行く気持ちになれないし、その場に足を踏み入れることもはばかられる。知り合いの船頭さんも何人か亡くなりました。今までと同じように行くことも支援だと思いますが、行けばじかに漁民の皆さんの生活に触れることになる。できる限り個人的にも支援は行ってきたつもりですが、なかなか進まない復興に忸怩たる思いをしているところです。

年齢に合わせた診療スタイルで

現在地で開業して7年目になります。こちらに移転したのは、規模を縮小して専門分野を中心に診ていくことと、自分自身の体力、気力をみながら年齢に応じて長く診療を続けていこうと思ったからです。

いずれ、糖尿病の患者さんとは長い付き合いになります。患者さんはあまり気づいていませんが、私たちドクターも一緒に年を取っていくことになりますから、これからは時間を短縮するなど、無理のない診療スタイルで、長く続けていくことが大事だと思うのです。 ずっと診続けている患者さんが腎不全や心筋梗塞などの重大な合併症を起こさないように、それでいて生活の質を落とさずに普通の人と同じように暮らしていけるようにしていきたいと思いますし、今、治療方法や薬の選択肢は増えていますので、診療に当たっては日々アップデートされた最新の知識で、患者さんを診ていきたいと思っています。

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斉藤 文子

さいとう・ふみこ

1945年東京生まれ。1977年岩手医科大学医学部を卒業し、1984年3月に岩手医科大学大学院医学研究科博士課程修了。岩手医科大学第一内科(現・糖尿病代謝内科)で糖尿病を中心に研究した後、県立中央病院、県立紫波病院などの勤務を経て1992年に斉藤内科医院を開業。2006年に中の橋斉藤クリニックを現在地に移転開業。日本内科学会認定医、日本糖尿病学会糖尿病専門医。

 

クリニックの受付

岩手県医師会の釣り大会で優勝(2010年6月)

志津川のスポニチ杯で優勝

最近は登山も始めた(2012年秋、三ツ石山頂にて)

人形浄瑠璃も20年来の趣味。文楽三味線の鶴沢藤蔵さんが第一のごひいき

愛猫のフクとポン。ベストショットのポーズ

中の橋斉藤クリニック

〒020-0871 盛岡市中ノ橋1-4-20 水晶堂ビル4階
TEL.019-601-2277 FAX.019-601-2276
【診療科目】内科・整形外科
【受付時間】
火〜金 10:00〜13:00 / 14:00〜17:00
土曜日 9:00〜12:00 午後は休診
【休診日】月曜・日曜・祝祭日