特集

消費税の増税が医療経営に与える影響

〜あなたの病院・医院の経営は大丈夫ですか?〜

税理士 楢山直樹事務所
税理士 楢山 直樹

はじめに

消費税の歴史 今後の増税予定

昨年の平成24年(2012)8月10日に民主党政権下で民主党・自由民主党・公明党の三党合意で“消費税の増税”を含む「社会保障と税の一体改革関連法案」が成立しました。

現在は、自由民主党政権に代わったのですが、消費税増税は、実施の前提条件に景気条項を設けてはいるが、平成26年(2014)4月1日から現行の5%から8%に引き上げられます。さらに平成27年(2015)10月1日から10%に再度引き上げられます。この消費税の 「控除対象外消費税」(いわゆる「損税」)として医療機関では経費が増加することとなり、経営を圧迫すると思われます。

ところで、皆様は、消費税の歴史を覚えているでしょうか?(笑)ここで、消費税の今までのおさらいをしておきましょう。(右図参照)

どうですか?覚えておりますか?結構、忘れたという人が多いのが日本人の良いところであり、悪いところでもありますね。

こうした中、皆様の病院・医院の医療経営における消費税の問題が生じてくることになります。

医療機関における消費税の現状

一般の商売の場合は、消費者であるお客様から預かった消費税(仮受消費税)から先払した消費税(仮払消費税)を差し引いた差額を納税することなります。理論的には消費税が増税になったとしても損益に与える影響は無いといえます。

しかし、医療機関は収入の大半が社会保険診療報酬であり、消費税が非課税(非課税とはカッコ良いですが、要するに消費税を取ってはいけない)となるため、消費税の制度上、医薬品の仕入等で支払った消費税を患者さんから貰うことができず、支払った消費税が医療機関の負担(経費の増加)となってしまいます。(下図参照)

医療機関における消費税の現状

消費税が増税になれば、医療機関の負担は当然に増えることとなり、利益に大きな影響を与えることになります。はっきり言えば、消費税の増税分だけ医療機関の経費が増えることにより、利益が減って赤字転落になる可能性が高くなってしまいます。

当事務所で医療機関の試算をしてみましたが、ある病院では約800万円の経費の増加で、赤字に転落するところもあります。また、診療所・クリニックでは約100万円の経費の増加になるところもあります。これでは、医療経営を圧迫して大変なことになりますね。

消費税の導入の時に遡ってみると、当時の日本医師会会長は武見太郎氏でしたが、平成元年に導入された消費税法において保険収入は「政策的配慮に基づく非課税取引」とされました。つまり、非課税(消費税を取ってはいけない収入)となっている。他方、自由診療報酬や雑収入については課税取引となり、消費税を上乗せして取れるようになっている。つまり、消費税をもらえない収入(非課税)と消費税をもらえる収入(課税)との二種類が混在することになってしまったのです。

厚生労働省の対応

厚生労働省は、社会保険診療報酬に対応する分を消費税の創設時(3%)である平成元年(1989)に0.76%、次に消費税率の改訂(5%)となった平成9年(1997)には0.77%となり、合計で1.53%が上乗せされて適正に価格転嫁がなされたとして消費税の問題は解決済みといわれています。

診療報酬の改訂は2年ごと(介護報酬は3年ごと)に行われるため、その都度、消費税を考慮して改定内容としているといった事実はないとされています。さらに度重なるマイナス改訂による項目の廃止や削除、包括化など、現在の診療報酬に対して消費税がどの程度補填されてくるのかが不明な状況が続いているのです。

今後の改正に注意

初診、入院料引き上げ (岩手日報記事:平成25年6月28日(金))
岩手日報記事:平成25年6月28日(金)

今回、幸いにも、岩手日報の6月28日(金)付の記事が出ました。

厚生労働省が診療報酬の引き上げを検討して医療機関の負担緩和をすることが狙いです。

自由民主党も、医療機関の負担軽減を検討するプロジェクトチームで、税の還付制度などを議論している、というものです。

今から、顧問税理士さんに病院・医院の消費税増税シュミレーションをしてもらい事前に対策をされることをお勧めいたします。

あなたの病院・医院の経営は大丈夫ですか?

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