第4回 釜石医師会 湊 博満 先生
「ペット残酷物語」
今年5月の診察のあと突然患者から先生うちのペット預かってくれない?頼まれた理由は息子が突然釜石の仕事をやめ東京で一番のペットショップへ就職してしまい自宅で飼っていたペットを放置したままお盆まで帰れないとのことだった。
今から10年以上前は私も自称釜石では5本指に入る爬虫類お宅で私の専門はカメだったがその頃その息子は私のペット仲間では釜石1番の爬虫類マニア中学生だった。6年前私は大病で診療所を1年休診しそれをきっかけにカメの飼育を止めていた。昨年11月母が老衰で他界をきっかけに私は気楽な一人暮らしを始めていたのでどんな爬虫類がいるのかちょっと気持ちが動いたがまあそのうちにね、と軽くことわった。
何日かして東京より末娘が帰省、米がなくなったのとのことでその患者の米屋に娘といくと、かみさんが出てきて2階から持ってくるから見るだけみてってよと言いながら40センチ四方のガラスケースを運んできたその中の巣に白いしっぽが見えた、何?と聞くと、なんだか?トカゲじゃないのとまったく興味がなさそう巣を開けてみると、おびえた目、栄養不良の皮膚と職業がらこのままなら1週間もつか?といった感じ、いつから餌をやってなの?息子がでていってからもう2カ月以上餌をやっていない、それにケースの中に画鋲が数個ある何これ?と聞くと犬の腹なぜていた旦那が早く死ねばいいと思って…。
娘が突然キレた、お父さんすぐ家に連れていこうよガラスケースを車に積んだそこへかみさんが来て先生もう一匹いるんだけど…。何が?…。蜘蛛…。大きいの?…まあ…名前はなんだっけ?そうタランチュラ…。私は無視してその場を立ち去った、こうして我が家にペットが来た。名前も飼育法もまったくわからない、娘はお父さん目が可愛いよと言って早速インターネットに向かっている。しばらくしてお父さん見て見てすごいのよの声、書斎のインターネットに向かう生まれて初めてインターネットの書き込みなるもに驚く、その数件を披露する。
その1 埼玉の32歳女性 よくぞ助けてくれましたなんという家族でしょう餌は生きたコオロギ、冷凍のでも可、食べさせる前にコオロギの手足を切って口が傷つかないように。その2東京B夫さん30歳、ひどすぎる、その夫婦に天罰を。 その3 仙台25歳のC夫さん そのトカゲはヒョウモントカゲもどきといってトカゲでは初心者、入門用で天然ではなく養殖です 餌はペットショップでコウロギ、ネズミのが年中養殖して売っていますので宅配可です。などなど、10数件の書き込みがあった、私はその書き込みを見て何故か不快を感じた、そのペットは体長20センチぐらいで体はひと肌色で尻尾に特徴がありヒョウモン柄がありしっぽに栄養を貯めるため栄養状態はしっぽの太さでわかるのだそうだ。それから4カ月試行錯誤でほーちゃん《娘の夕帆の名前から》を飼育、ほーちゃんはみるみる健康を回復、しっぽも2倍の太さにヒョウ紋も綺麗に、私が呼ぶと自分の名前も覚え巣から餌の時間と思い顔を出すまでになった。
そして約束のお盆がきた。飼い主の息子と母親が訪ねてきた。息子に4カ月ぶりにみてどう?と聞くと、立派になりました…。言うまいと思ってがつい私は口に出してしまった、養殖トカゲを養殖したコウロギやねずみを餌にして動物を育て売る商売に疑問を感じない?彼はちょっと…と小声で答えた。これからどうするの?君が飼うの?いえ繁殖に使います、ありがとうございました、と言ってほうを連れて帰っていった。お盆で帰省していた娘が涙ながらに、だからお父さんが飼うと言えば良かったのにと私の後ろで泣いていた。母の初盆も無事に終わりどっと疲れがでてきた。